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運輸安全委員会よりANA関連事故調査報告書が3通発行されました.

2014.10.02 Thu

運輸安全委員会よりANA関連事故調査報告書が3通発行されました.

こんばんは,
先日(9/25)に運輸安全委員会JTSBJapan Transport Safety Board)より過去起きた,
ANA関係事故報告書が3通公開されましたので,概要をご紹介します.
何れも分類としては,重大インシデントとなっています.
報告書のURLを張り付けておきますので,
詳しい内容は,報告書及び添付資料をご覧ください.
また,ANAのHPにも掲載されていますね.
https://www.ana.co.jp/topics/notice140925/

まず,2012/12/8に発生した,庄内空港でのオーバーラン事故です.
報告書:全日本空輸株式会社所属 ボーイング式737-800型機の重大インシデント[オーバーラン](庄内空港滑走路東端、平成24年12月8日発生)
http://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/aircraft/detail.php?id=2061

このインシデントですが,
2012/12/8の10:26分ごろ,羽田発庄内行のANA899便が,
庄内空港で着陸後滑走路を80メートルオーバーランしたという内容です.
機材は,737-800,機番JA75AN

運輸安全委員会は,オーバーランの原因について,降雪などの影響により,
滑走路で発揮できるはずのブレーキの制動力が得られなかったものとの推定です.
調査の結果ですが,ブレーキやタイヤ,エンジンなどに異常はなく,
着陸時の滑走路状況が氷点に近い気温での降雪などにより,
空港が機長へ報告した時点と比べて変化した影響があったとの見方を示したとの事です.

報告書では,着陸後の操縦については,
機長が滑走路の残距離約500メートルでブレーキを踏んだ事で,
オートブレーキが解除されたと推定され,
マニュアルブレーキに変わった時点で最大に踏み込まれていなかった事が,
オートブレーキ解除に伴い,制動力の低下に影響した可能性が考えられるとしている.
また,リバース・スラストレバーをアイドル位置まで戻すつもりで,
ダウン位置まで戻した操作していた事がわかり,
滑りやすい滑走路状況ではアイドル位置に保持しておく必要があったと指摘.
また,空港消防隊が待機していながらも,
火災が発生しなかったことで現場へ出動しなかった点については,
出場すべきであったとした


ANAでは,再発防止策として,全運航乗務員に対し,
雪氷着陸性能の基準やオートブレーキを使用した場合の着陸性能,
雪氷滑走路への着陸時の留意点などを解説した社内向け文書を発行し,
周知を図るなどの対策を行ったとの事です.
一方,庄内空港での再発防止策についてですが,
到着機に対し,雪氷状況調査を予定到着時刻の20分前から,
10分前に通報する様に運用を改めたとの事です.

このインシデントは,ブレーキの適切な使用及び,天候の急変に伴う状況判断が
甘かったとも言えますね,降雪のある空港での運用は最新の注意と,
綿密な情報提供が大事だと思います.


続いては,2013/1/16に高松空港へ緊急着陸した787-8バッテリー発煙トラブルについての報告です.
報告書:全日本空輸株式会社所属 ボーイング式787-8型機の重大インシデント[非常脱出スライド使用による非常脱出](高松空港、平成25年1月16日発生)
http://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/aircraft/detail.php?id=2063

このインシデントですが,
2013/1/16にANA692便が,山口宇部離陸後羽田空港へ向け飛行中の四国上空高度約32,000ftを上昇中,
08:27にメインバッテリーの不具合を示す計器表示とともに,
操縦室内で異臭が発生した為,目的地を高松空港に変更し,08:47高松空港に着陸した
その際,緊急スライドを使用脱出中に乗客4名が軽傷を負った.
メインバッテリーは損傷したが,火災には至らなかったという内容です.
機材は787-8,機番はJA804A

報告書では原因について,メインバッテリー内にある8つのセルのうち,
6番セルの内部の発熱現象を起点として,メインバッテリーの熱暴走が発生.
発熱により膨張したセルケースとブレースバー(補強材)が接触し,
アース線を介してショートした事によりバッテリーボックス内に大電流が流れた.
この結果,アーク放電が発生した事で,熱の伝播を助長して熱暴走し,
バッテリー損傷を拡大したとの推定までは至ったとの内容ですが,
6番セル内部での発熱現象は内部短絡による原因としたが,
内部短絡が発生する仕組みを特定するには至らなかったという結論です.

残念ながらバッテリートラブルの根本的な原因は究明に至らずでしたね.
現在も,ANAJALとも,787-8に対しての改良バッテリー搭載後の,
機体不具合情報をHPを通じて公表していますね.
一時期より,巷の反応は随分沈静化してきた感じもしますが,
これからも安全運航を期待したいですね,

最後は,エアーニッポン機による背面飛行の事故報告です.
報告書:エアーニッポン株式会社所属 ボーイング式737-700型機の重大インシデント[異常姿勢からの急降下](串本の東約69nm、高度41,000ft、平成23年9月6日発生)
http://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/aircraft/detail.php?id=2030

このインシデントですが,
2011/9/6の10:49頃,エアーニッポン(ANK)が運航する,
那覇発羽田行きANA140便が,紀伊半島沖の太平洋上空でほぼ背面飛行状態となり,
急降下し,立ち上がった状態で業務をしていた客室乗務員2人が軽傷を負った内容です.
機材は737-700,機番JA16AN

同日10:48すぎに,トイレから戻った機長を操縦室に入室させる為,
副操縦士がドアの鍵を解錠するスイッチ「ドアロックセレクター」を操作する際,
誤ってラダーを左右に動かすスイッチ「ラダートリムコントロール」を左に合計12秒間操作した為,
機体が左に大きく傾き,その後急降下した.急降下が収まるまで、機長は入室できなかった。

報告書では原因について,
ドアロックセレクターを操作するところをラダートリムコントロールを操作したスイッチの誤操作と,
この誤操作を認知することが遅れた事,
機体の姿勢回復の操作が不適切または不十分だったとした.
また,これらのいずれかがなければ急降下には至らなかったとしています.

このインシデントについては,
ニュースでもCGを使った機体の挙動が放送れましたが,
凄い状況だったのを記憶しています.
報告書にそのCG動画が掲載されていますので,是非ご覧ください.
まさか,ドアロックとラダートリムを間違えるとは,驚きでしたが,
確かに近くにあるスイッチで,形状も似た感じなので,
間違える確率も無くはないかなと思います.

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JA8094 >>URL

Re: No title

まっつんさん.こんばんは.
航空機の構造上の限界がありますが,737もよく耐えたとも言えますね.そうですね.コクピットではパイロットが間違わない配慮で,ギアレバーはタイヤの形,フラップは翼の断面の形などで,視認性をあげていますね.
スイッチ類の形状についても,リスク回避の観点から改善が必要だと思います.

Edit | 2014.10.08(Wed) 20:57:00

まっつん >>URL

No title

140便の事故ですが、あの状態から機体を立て直す事ができた事、空中分解がなかった事が奇跡としか思えません。ゼロにはできないヒューマンエラーですが、当件に関しては背筋が凍りました…
スイッチを間違えた事に対して、様々な議論が起きていますが、実際に事故が起きたわけですから、リスク回避のためにも、メーカー(ボーイング)にも改善を検討して欲しいですね。

Edit | 2014.10.05(Sun) 22:03:58

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BOEING 747の大ファン.ANAGrの機材を中心に,空港で撮影した機体や,機体整備工場で整備中の機体のトリトンブルーの機体達の紹介に加え,航空関係全般のお話や,様々な情報,その他趣味の話なども掲載してまいります.どうぞ宜しくお願い致します.プロフィールのアイコンはANAより使用許可を頂いております.

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