737型機の垂直尾翼の形状の変化について.
2020.06.19 Fri
737型機の垂直尾翼の形状の変化について.こんばんは.
先日,ANAの737-500が退役しましたが,
現在は,国内ではANAを含めて,各社が737NG(Next Generation)と呼ばれる,
-700,-800(海外では-600,-900もあり)が就航していますね.
-600それ以前の737Classicと呼ばれる,-300,-400,-500と.
737の最新型である737MAX(MAX7,MAX8/MAX200,MAX9,MAX10)
ですが,基本的な外見は-100/200と差ほど大きな変化はありませんが,垂直尾翼について,
-100/200とそれ以降の派生形737で,垂直尾翼の形状が変化しているのをご存知でしょうか?.
-100/200自体見れる機会が少ないので,中々わかりずらいと思いますが..
先ずは,ANAが運航した(運航中の),-200,-500,-700,-800の写真をアップします.
各機材の垂直尾翼を確認下さい.
・737-200(機番:JA8453)撮影:1990/11/1 羽田空港

・737-500(機番:JA306K)撮影:2014/8/6 鹿児島空港

・737-700(機番:JA17AN)撮影:2020/3/20 羽田空港

・737-800(機番:JA76AN)撮影:2020/3/20 羽田空港

よく見ると,-200と,-500,-700,-800の垂直尾翼の形状が異なるのがわかると思います.
そこで,-200と-200以降の737を代表して,以下の写真は-500を真横から見た写真です.
・ANA機体メンテナンスセンターで整備中の737-500(機番:JA359K)撮影:2015/5/10 ANA掲載許可取得済

-500垂直尾翼をクローズアップすると.上記写真の赤丸の箇所ですが,
垂直尾翼の根本から一度折れて立っている,(逆への字の様な構造)をしているのが判りますね.
・上記JA359Kの垂直尾翼のクローズアップ

続いて,-200の垂直尾翼の構造です.-200では,-500の様に垂直尾翼が折れずに,
根本から立ち上がっているのがわかると思います.-200自体,古い機材なので,
-200を見た事のない方は,パット見では,機材名がわからないかもしれませんね.
・羽田空港をタキシング中のANKの737-200(JA8453)撮影:1990/11/1 羽田空港

・上記写真のJA8453の垂直尾翼のクローズアップ

・参考,737MAX7,垂直尾翼の形状が-200とは異なりますね.(出典:Wikipediaより)

では,-200と,-500以降(実際は-300以降)での,垂直尾翼の形状変更の違いは何でしょうか?.
まず.この垂直尾翼付け根のせり出し部分を,ドーサルフィンと呼びます.
ドーサルフィンの目的ですが,飛行中の安定性(横方向の安定)を向上させるものです.
-300以降に,このドーサルフィンが装備されていると言う事は,
-100/-200からの設計変更で,-300以降で,安定性を向上(説明は後述)させていると言えますね.
737以外の機材の,ドーサルフィンですが,
ボーイング機では,707,717,727,747,757,767,777,787には,
各派生形を含めドーサルフィンの装備ありません.
また.ボーイングが1997年に吸収した,旧マクドネル・ダグラス社のラインナップである,
DC-10,MD-11,DC-9,MD-80/90シリーズなども,ドーサルフィンの装備はありません.
一方,エアバスですが,自社貨物機A300-600ST(愛称:ベルーガ―)を除き,
ドーサルフィンの装備はありません.
ボーイングの自社貨物機である747-400LCF(愛称:DeramLifter)ですが,
こちらは,A300-600STとは異なり,ドーサルフィンは装備されていません.
ボーイング機では,737-300以降の機材にのみ装備されていると言えますね.
そもそも,垂直尾翼ですが,大きくすれば,安定性が増しますが,
逆に重量や空気抵抗が大きくなります.そこで垂直尾翼の根本部分を前方に
張り出させ面積を増加させて,空気抵抗と重量を抑える為に装備されたのが,
ドーサルフィンです.ドーサルフィンですが,垂直尾翼前方付け根だけではなく,
機材によっては.機体下部の側面(お腹とか脇腹とでも言いますか)にも,
このフィンが付けられています.ただし名称を,ベントラルフィンと呼びます.
ジェット旅客機にはついている機材はないと思いますが,
身近な機材では,DHC-8-Q400にこの,ベントラルフィンを見る事ができます.
ボーイング機で,旅客型を改良した軍用機.(早期警戒機等)については,
大型レーダーの装備の関係で安定性を増す為,ベントラルフィンが装備されている機材も存在します.
・セントレアを離陸するDHC-8-Q400(機番:JA856A 2011/12/23撮影)

・DHC-8-Q400のドーサルフィンを拡大

・セントレアを離陸上昇するDHC-8-Q400(機番:JA856A 2011/12/23撮影))

・DHC-8-Q400の胴体下部側面に装備されているベントラルフィンをクローズアップ

ドーサルフィンですが,その他の国内エアラインで使用している機材では,
FDAやJLJが運航している,ERJ-170や同175,
IBXが運航している,CRJ170,また,レシプロ機では,
JACが運航している,ATR42-600,HACのSAAB340B,
ANA(AKX)/RACが運航している,DHC-8-Q400(RACはDHC-8-Q400CC)
でも,ドーサルフィンが装備されています.
参考までに,YS-11についても,ドーサルフィンが装備されていました.
・高松空港で駐機中のANA(旧ANK)のJA8736(1994/10/9 撮影:高松空港)

・JA8736の垂直尾翼部分をクローズアップ.ドーサルフィンが確認できますね.

また,現在就航している,小型機旅客機についても,ドーサルフィンの装備が確認できます.
・JACが運航する,ATR42-600(機番:JA01JC)ドーサルフィンが確認できますね.(2017/8/13 撮影:鹿児島空港)

・JLJが運航する,ERJ-170(機番:JA248J)ドーサルフィンが確認できますね.(2017/8/13 撮影:鹿児島空港)

・FDAが運航する,ERJ-175(機番:JA09FJ)ドーサルフィンが確認できますね.(2017/8/15 撮影:鹿児島空港)

・IBXが運航する,CRJ-170(機番:JA02RJ)わずかですが・・ドーサルフィンが確認できますね.(2014/8/7 撮影:伊丹空港)

国内就航中の737-700,737-800,DHC-8-Q400,ERJ-170/175,CRJ170,
ATR42-600,SAAB340Betc・・,と国内でも搭乗できる頻度は多い機体だと思います.
これらの機材に搭乗の際は,ドーサルフィン,ベントラルフィンの構造を確認するのも,
いいのではないでしょうか?
2020/6/20追記
では,現在,型式証明取得に向けて試験飛行が続いている,
MSJ(Mitsubishi SpaceJet)ですが,
こちらは,ドーサルフィンの装備はあるのでししょうか?.
答えは,Yesです.実機の写真がなく,
Wikipedia掲載の写真ですが,以下になります.
垂直尾翼に,ドーサルフィンが確認できますね.
MSJ3号機(機番:JA23MJ).(出典:Wikipediaより)

MSJ3号機(機番:JA23MJ).(出典:Wikipediaより)
垂直尾翼をクローズアップ.ドーサルフィンが確認できます.

こうやってみると,小型旅客機については,垂直尾翼を大きくすれば,
安定性は増す事になりますが,逆に重量の増加を招く為,大きくはできない,
極力垂直尾翼を小型化し,ドーサルフィンを装備する事で,
安定性を良くする設計の考え方なのでしょうね.
コラム執筆はじめました
https://latte.la/column/columnist/129314
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Category: 航空
Comment
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参考になりました
ドーサルフィンの名称や役割については承知していましたが、ここまで詳しく写真入りで解説したサイトは初めて見ました。
とても参考になりました。
とても参考になりました。
Edit | 2020.06.27(Sat) 09:04:23